第22話   一尾70円の黒鯛の稚魚   平成16年09月06日  

92日付けの山形新聞の夕刊と9月4日の荘内日報に県栽培漁業センター(鶴岡市三瀬)が養殖クロダイの飼育に成功したとの報道があった。伝統の庄内釣りに明るい朗報と感じたと共にとうとうここまで来たかと思った。

新聞報道によれば近く二万五千尾の放流を行うと云うが、クロダイの飼育は意外と困難で餌付けが中々出来ずに更にオスから一部が雌に変わるという雌雄転換種である為に雌の判別が困難を極めたという。クロダイ釣りの本場である庄内にとっては、さまざまな困難を乗り越えて親の飼育、種苗育成の技術の成功は待ちに待ったものである。庄内釣りの関係者は以前から黒鯛の飼育、種苗育成が県に要望していたが、色々と紆余曲折があり中々実現しなかった。しかしながら遅まきながら、実現したことは非常に喜ばしい限りである。

この成功の影には関東からクロダイの稚魚を放流して来た温海町の釣愛好会「おけさ会」の地元産の稚魚の放流が出来ないかと云う呼びかけがあったからだと云う。採卵用の親の確保の為に「庄内おけさ会」等地元釣の愛好会が協力して秋と春に同センターに80匹の親を提供した。以前「おけさ会」が中心となり心ある釣師の方々の献金を募って関東から稚魚を買って放流して来た。その高価なシノコダイを買ってまで放流しているのにかかわらず、シノコダイが面白いように釣れるとか云ってわざわざ釣りに行く不心得者が多数いた。放流する人が居れば、わざわざそれを釣りに行く馬鹿も居るから魚が増えないのだ。確かに庄内には昔からシノコダイ釣りと云って幼魚を釣る習慣がある。その時代は春先の腹ボテのクロダイは決して釣らなかったから数は今ほどに減ることは無かったと云う事である。がしかし最近では春先の産卵前の腹ボテの大型クロダイを釣る習慣が中央から伝わり、それが半ば慣習化している。これではただでさえ黒鯛釣りのブームで釣り人が増え、少なくなって来ているのに黒鯛の激減に拍車をかけていると云うのは当たり前である。

だから養殖された黒鯛の稚魚の放流が必要となって来るのである。本当に黒鯛がいなくなってからの反省なら誰でも出来る。ある人から聞いた話であるが、関東から取り寄せた場合クロダイの稚魚一尾が100円したと云う。100200の放流では数は決して増えない。少なくとも万単位の放流でなければならない。1万尾では100万と云う金がかかる。クロダイの復活には如何に金がかかるかと云うひとつの材料になるだろうと考えられる。県栽培漁業センターではこれを機に10cmほどのクロダイの稚魚一尾70円で放流して貰える釣りの団体を募集していると云う。地元に貢献と云う意味ではもう少し価格の引き下げを図り善意ある釣り人なら誰でもが、放流に参加出来る様な体制を作って欲しいものである。

伝統の庄内釣りにはどうしてもクロダイでなければならない。庄内の釣具店、釣りの愛好会などと共に官民一体となってのクロダイを増やすことを考えねばならない時期が来ている事をひしひしと感ずるものである。



問合せ先:県栽培漁業センター 0235-73-3763